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那須電波干渉計によって観測されたCygnus X-3 の巨大フレア

Feb. 27 2022

那須電波干渉計では、2021年10月19日にCygnus X-3からの新たな巨大フレア出現を捉え、その後も約 1ヵ月にわたってフレアが変動・収束しながら消滅していく姿を追った。さらに、2021年12月25日には新たな巨大フレアの出現を捉え、その姿を2022年1月19日まで克明に記録した。

マイクロクェーサーの一つであるCygnus X-3は、白鳥座に属しX線を放つ4.8時間周期の連星であり、主星はブラックホールもしくは中性子星、伴星はWolf-Rayet star(WR)である。最近の研究では、メインの電波バーストに先立って、hard X-ray領域においてhypersoft/quenched stateとよばれる不活性状態を遷移することがわかってきた。それと同時に散発的なガンマ線放射が見られることが多い。また通常はhypersoft/quenched stateが解消された直後に電波バーストが起こり、その後はX-ray領域のhard stateが持続するというシナリオが成立していた。しかし今回の2回およびその2ヶ月前に起きた1回を含めた計3回の電波バーストに関してはこのシナリオが崩れ、1,2回目の電波バーストに関してはquenched stateが解消されないという(記録がある限りにおいて)かつてない興味深い経過を示した。しかしこれも、3回目のバーストでようやくhypersoft/quenched stateが解消された。

K. Tsubono, K. Asuma, K. Niinuma, K. Takefuji and T. Daishido:
"Recent outbursts from Cygnus X-3 observed with the Nasu telescope array at 1.4GHz"
Astronomer's Telegram, #15152 (2022)

K. Tsubono, K. Asuma, K. Niinuma, K. Takefuji and T. Daishido:
"Continuing observations of the recent Cygnus X-3 outburst with the Nasu telescope array at 1.4GHz"
Astronomer's Telegram, #15018 (2021)

K. Tsubono, K. Asuma, K. Niinuma, K. Takefuji and T. Daishido:
"Detection of a new outburst from Cygnus X-3 with the Nasu telescope array at 1.4GHz"
Astronomer's Telegram, #14989 (2021)

2021-2022のCygnus X-3巨大フレア